14軍用自動車補助法
大正となって軍用自動車調査委員の調査や、欧州英・独・仏の各国で実施している軍用自動車の民間保有方式などに鑑み、先ずは国防上の観点から民間保有の自動車を指定して補助金を支給し有事の際の徴用に備えるとともに、日本の自動車工業の発達に資することを目的として、大正7年(1918)3月23日に法律第15号として「軍用自動車補助法」が公布された。
第1条の「政府ハ予算ノ範囲内ニ於テ陸軍ノ軍用ニ適スベキ自動車ノ製造者又ハ所有者ニ対シ補助金ヲ下付スルコトヲ得」に始まる22条からなり、第7条は「製造補助金ヲ受ケタル自動車ハ…之ヲ保護自動車ト称ス…」、第8条は「主務大臣ハ軍用ノ為何時ニテモ保護自動車ヲ収用又ハ使用スルコトヲ得…収容又ハ使用シタル場合ニ於テハ…所有者ニ補償金ヲ下付ス…」とされている。
軍用自動車補助法施行細則
同年5月1日には陸軍省令第8号として、同法の施行細則が60条からなる施行細則が定められ、第5条で「自動車製造ノ為供用シ得ベキ外国製品ハ当分の内左ノ種類ニ限ル」として、使用を認める外国製の部品は、「1.発電機及点火具、2.揮発器、3.球軸承※ 36、4.陸軍大臣ノ認可ヲ得タル特殊品」とされ、国産品ではまだ使用に十分耐えるものがないことを示している。また、「第二章保護自動車ノ構造及能力」、更に附則として「自動車部品ノ様式及寸度」など、技術的指定がなされている。
このなかで、寸法の単位についてはメトリック制度の使用としており、使用するねじの規格をメートルねじとするようにした。これまでは、明治以来使用されている吋(インチ)による表示、製作であったので企業によってはいくらかの混乱が生じたといわれている。これは、大正10年(1921)に日本で初めて制定される日本標準規格(JES、Japanese Engineering Standards)を目標としたものともいえる。
大正7年(1918)2月3日、軍用自動車補助法の公布に同5月1日実施に応じ、TGE A型が同法による保護自動車検定試験に合格、保護自動車検定書第一号を受領している。